ヤオコーが2021年8月にオープンした新業態「フーコット」の視察に飯能まで行きました。
フーコットはローコスト型業態で、エブリデイ・ロー・プライス(EDLP)が特徴。ヤオコーが2017年4月に完全子会社化した「エイビイ」によく似た業態といいます。
私は電車でいったので、西武池袋線の元加治駅から歩きました。片道約2時間。遠かった…。
元加治駅付近はのどかな住宅地+農地という印象です。
ちなみに元加治駅からフーコット飯能店に向かう途中こんな看板を見つけました。
セブン-イレブンが移動販売車を出しているようです。駅前なのに店が何もないので買物難民も多いのだろうなと推察。もちろん、車をもっていて、運転できる世代はそれでいいのでしょうが…。
(月刊コンビニ元編集長の梅澤さんがこの記事で書いている「セブンあんしんお届け便」かな…)
ストイック・シンプル・わかりやすい
駅から20分ほど歩いてフーコット飯能店に到着。ファサードは、むっちゃアメリカンなイメージです。
平日昼間なのによい客入り。夕方はどうなるんだ…と感じる客数。店内は音楽もかからず、静かで、「ピッ、ピッ」とレジの音がするだけ。静謐。高い天井。派手なPOPやサイネージなどは利用しておらず、そっけないぐらいシンプルな店内。
主通路沿い、生鮮三品は絞りこんでとにかくお安く、で、静かに買物気分が盛り上がります。
入口に入ってすぐ左手に高い黒いバナナの棚。Lサイズ69円、インパクト大で目を引きます。青果は品質がいいものが安く、また一品の陳列量が圧巻でした。壁面に冷ケースでホウレンソウ小松菜を売っているのだけれども、一つの冷ケースがまるまるホウレンソウだけ。
基本的に一品目1アイテムで、フェース数をばんと取る。
選択の幅は少ないんだけど、とにかく安いので、ついつい買って帰りたくなります(仕事で店舗視察の際に買い物をするときりがないのでなるべくしないようにしているのですが、それでも、いつも何やかにや買ってしまって、帰りは重い荷物を持って帰ることになります)。
日本の店は情報量が多くて選びにくいというのが私の持論です。POPが、呼び込み君が、小さなディスプレーに映し出された映像が「買って!買って!」と声をそろえて訴えかけてくる店内は、楽しさや賑わいの演出ではある一方、ちょっと情報量多すぎじゃない?といつも思うのです。あふれる情報のなかから何か求めるものを探し出すという行為は、正直なところ疲れてしまいます。
それと比べるとエイビイは、「よい商品をシンプルに陳列して売る」ということに主眼を置いています。わかりやすい。続く肉、魚も、種類は多くないものの、安くてクオリティが高い。ということで、ついうっかりまたここでローストビーフの肉を買ってしまう私です。
安さの理由の一つはプロセスセンターの利用
なお、安さの理由は、店舗の裏側に生肉や鮮魚の加工場を持っておらず、プロセスセンターという、いわば小売業におけるにおけるセントラルキッチンで作成しているという点です。設備や作業を一箇所に集約することで、出店時のコストダウンや店舗の人件費を削減できます。
商品の表示を見てみると、車で50分ほど離れた埼玉県比企郡小川町にフーコット小川生鮮センターがあり、そこで製造されているようです。次の出店も、フーコット飯能店と小川生鮮センターの間に近い場所になると予想されます。
惣菜もカツカレー258円、ピザ450円、海鮮丼498円と他では見ない価格。ちなみにこちらは店舗製造のものとプロセスセンター製造のものが入り混じっていました。エイビイでは惣菜を扱っていないので、ここにはヤオコーのこだわりが感じます。
巧みなグロサリーの刺激の配置
白眉の出来と感じたのは、グロサリー部門の刺激の作り方。小売業では、お客さんに店内を歩いてもらうことが重要になります。買いたいものだけ買って帰ってもらうのではなくて、少しでも店内を歩いて=売り物を見ていただくことが、購買につながるという考えです。
そこでお客さんが「おっ」と思って足を止めるとか、もっと先を見てみたいという気にさせることがとても大事で、その「おっ」と思うことを「刺激」と呼んだりするわけですが、これの作り方がうまいなと。
うまい点の一つは、よそであまり見ない商品を差し込んでいることにあると感じました。たとえばジュース売り場を横にザザッと見ていたら、見たことのない海外のフルーツジュースがパッと目に飛び込んでくる。それもお客さんの一番目につく位置、つまりゴールデンゾーンに。かわいいパッケージ。思わず足を止めてみる…。
こんにゃくの売場をなんとなく見ていたら、地元のメーカーの地元ならでは商品がそこそこのフェースをとって並んでいる。他のスーパーで見ないな~~。なんだろうとつい手に取る。
これ、狙ってるの?と考えずにはいられません。
もう一つの理由は大容量。これも「よそであまり見ない商品」の一種ではありますが、大容量のおろしニンニクや、1リットルのドレッシングなどが、ゴールデンゾーンにあってパッと目を引く。
大容量って楽しいんですよね。「おろしニンニク使いまくれ!口は臭くなるけど、うまいぞ!」ってメッセージを感じてしまう。しかもg単位だと安い。業務スーパーにも通じる色気です。
下手なPOPなどがない分、そういう商品がパっと目に入り足が止まり、もっと面白いものがないかな…と奥へ奥へと歩いて行ってしまう。
一見した限りフーコットはナショナル・ブランド(NB)、いわば一般メーカー商品が中心で、小売業が作ったオリジナル商品=プライベートブランド(PB)の扱いはありませんでした。
で、普通低価格業態のグロサリーというと、趣向を凝らしたPB中心で行くか、NB中心だと安さで勝負!みたいになって、後者の場合あまり面白くないなぁ…という印象を持つことが少なくありません。
でもこのフーコットのグロサリー売場は、NB中心なのに、「もっと見てみたい」という気にさせる。そんな色気を感じたのは、これらの理由によるところだと思いました。
何せ最近のスーパーマーケットは守備範囲外なもので、それほど店を多くは見ておらず、これがエイビイ由来のものなのか、ヤオコー由来のものなのか、それとも担当者の方の個人的な何かなのかなどは全く存じ上げないのですが、とにかくこのお店に関しては、グロサリーの刺激の選び方、散りばめ方がうまいなぁ…と感じた次第です。
(ちなみに日配は牛乳2リットル149円、食パン69円等々、安いけどびっくりするほど安くないという印象でした)
会計は現金のみ。ポイント無し
会計は現金のみ。セミセルフレジで、ポイントなどもつきません。これまたストイック。ドラッグストアであればコスモス薬品。
なお最後に驚かされたのが、レジ袋が1枚2円で激安だったこと。(枚数制限がされていました)。なんなら家のごみ袋用に毎回買っても構わないですね。(100円均一のごみ袋も、単価4円ぐらいしますからね…)。
詳しいレポートは、月刊マーチャンダイジング2021年11月号に、三浦美浩さんにご執筆いただいたものを掲載しましたのでそちらをご参照ください。(こちらはあくまで個人的な感想ということで)